深窓の姫宮■■■16■


体がふわふわと浮いているような、夢を見てるような、でも、切ないような…。
熱い手が、体中に触れるのは、ひどく心地良かった。

でも、そのぼんやりとした思考も、一瞬にして覚める。
「良人さまっ、何を…あっ、ぃや」
あり得ない位置にある良人さまの頭を離そうと、その肩にやろうとした手は、呆気なく宙をさ迷った。
ぴちゃり、と音がたつ。
まるで、猫が水を飲むような…。
「やめて…なんでそんなところ」
舐めるのか?とは、聞けなかった。
貪るように、そこに口付けられ、くちゅり、と音を立てて、良人さまはこちらを見上げた。
「すごく良いでしょう?」
「そんなこと…わからないわ」
「じゃぁ、わかるまで、教えましょうか?」
にこり、と笑って、良人さまは視線はそのままに、またそのに口付けを再開した。
良人さまが触れる、その度に、頭の奥が痺れるような感覚が広がって、何も考えられなくなってくる。
口付けだけじゃなくて、指も這わされる頃には、じんとした疼きが、腰の辺りで、熱を持ち始める。
「ぅんん…」
堪らなくなって、腰をくねらせる。すると、笑みを湛えた良人さまが、こちらを見る。
「良くなりましたか?」
その言葉に、頬に熱が集まって、私は、ぶんぶんと首を横に振った。
くすくすと笑って、良人さまは、続ける。

づぶりと指が中に入る。
中ってどこなのか、自分でも分からなかったけれど、そこからひりりとした感覚が伝わる。でも、嫌じゃなくて、さっきから腰の辺りに集まる熱を冷やすような、でも、更に集めるようなそんな感覚だった。
つぷ、つぷと試すように指が動く。
私の反応を楽しむように、良人さまは私の瞳を見つめている。
カンナビの森の色。
讃えるように、人は、そう言うと聞く。
でも、森を知らない、まして、カンナビの森など見た事もない私には、それは、夜空の色だった。
どこまでも、深く澄んだ、真っ暗な闇の色。
そして、私はまた、あのぼんやりとした感覚に包まれていく。

ふわふわとしていたのに、それは、いつの間にか、熱く煮えたぎるような疼きをもたらし、私は、意味も分からず、許しを請う。良人さまは、私の声など聞こえないかのように、手や舌の動きを止めなかった。
ぎゅっと閉じた瞳の向こうに、何かが見えた気がした。

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