深窓の姫宮■■■17■


くたくたで、浅い息を繰り返す私とは、対照的に、良人さまは、元気そう。
「少しばかり無礼をお許しください」
今さら何を言うのかと思った。
そう思ったのが、分かったのか、良人さまは、にやりと笑って、苦笑する。
「今度は、良いだけでは済まないですから」
「何するの?」
「男を教えるんですよ」
少し間をおいて、良人さまはそう答えると、私の両膝を掬うようにして少し持ち上げ、自分の体を割り入れた。 するりと良人さまは自分の腰帯を解く。
そう言えば、私の衣服はとうに脱ぎ捨てられてしまっているのに、良人さまはそうではなかったらしい。その事に気付き、少し恥ずかしくなる。
「恐ろしいですか?」
見つめ合っていた視線を外したからだろうか?そう聞かれる。
恥ずかしさから、外した視線だったけれど、考えてみる。恐ろしいだろうか?
「何も分からないものに、恐れを抱くほど、怖がりではありません…それに、良人さまは知っているのでしょう?」
なら、怖くない。そう思った。
良人さまは、目を見開いて、しかめっ面になって、一つ唸った。
「なるほど。確かに存じ上げていますよ。勇敢なる姫宮」
低く掠れた声は、口早にそう告げた。
そして、口を口で塞がれ、ぐっと体か密着する。
指で、広げられた場所に、何か堅いものが押し付けられる。
ぐっ、ぐっ、ぐっ、と呼吸に合わせて、それは中に入ってくる。
痛いと訴えようにも、声にしようとする瞬間に、ぐっと押し進められるので、できそうにもなく、意味をなさない声が口から漏れる。
でも、不思議と突き放そうとも思わなかったのは、まっすぐ見据えられた瞳に優しさのような色が見えた気がしたから。そして、脇腹を労るように、そっと撫で上げ続けてくれたら。
「これが、男、なの?」
すごい圧迫感と痛みに苛まれながら、何とか口にする。
良人さまも、苦しそうに眉をしかめたまま、ええ、と短く返事をする。
「痛みは?」
「それほどでも。我慢できないほどでもないわ」
「なんとも、いじらしい姫宮だな」
いつの間にか、伝っていた涙をそっと拭ってくれる。それは暗に、痛いのを我慢してるだけだろう?って言ってるみたいだったけど、痛いことより、なんでこんなことをするのか?これが、男って何?とか、いろんな感情や考えが頭を掻き乱してて、よくわからなかった。
「痛い、嫌だと泣くものなの?」
「さぁ?俺は、男だから、よくはわかりません。さて、動きますね」
「動く?」
「たっぷりと男を味合わせてさしあげます、って事です」
ぐんと密着していた体が、さらに密着する。
ずっちゅ、ぱんっっと腰の動きに合わせて、音が響く。
想像もしなかった展開に、私は、必死になって息を合わせる。
不規則な振動で揺らめく視界の中、あの夜空の瞳を懸命に追う。良人さまも、じっと私を見つめ、荒い呼吸を繰り返して、腰を動かす。
じんじんと痛みのようなものが、そこから広がっていく感じに、私は眉をしかめた。
それに気付いたんだろう、良人さまは、突き入れるような動きから回すような小刻みな動きに変える。しかも、腰に添えていた手は、先程の場所に触れ始める。
手のひらで押し潰すような強い刺激に、ぅんんっと声を漏らす。
「そこっ…ぃや」
体を捩るけれど、どうにもならない。
そればかりか、ぐっと腰を引き上げられ、立て膝をした良人さまの大腿に半ば乗せられる。かりかりと爪先が、先端を刺激する。
ああぁ、頭、おかしくなりそう。
そんな感覚のまま、突然、腰への揺さぶりが激しいものになる。
上から下に、穿つように、何度も何度も。
その間中、良人さまの指はずっと私を刺激し続けていたから、私は、何度も視界を真っ白にし、大粒の涙を溢した。細めた視界の先には、いつだって深更の瞳が、情熱的に私を見ていて、うわ言のように、良人さまの名を呼ぶと、幸せそうにそれが弧を描く。
動く度に、はたたと汗が零れ落ちる。それが、私の肌に当たって弾ける。なんとなく、綺麗だなと思った。
「もう少し、無体を許してください」
眉間に口づけが落とされ、また視界が真っ白になって、びくつく体に、今まで以上の早さと激しさで、腰を打ち付けられる。
もうくたくたで、たぶん、意識が半分くらい遠退いていたんだろう、あまりの激しさに思わず、良人さまに腕を伸ばしてしがみついた。良人さまもそれを抱き締め返してくれ、腰の動きはもっと激しくなって、ぴたと止み、首筋に埋められた良人さまが、うっと呻いた瞬間、お腹の中で、何かが弾けた。
どびゅびゅびゅっと私に勢いよく打ち付られる感覚に、なんでだろう腰が揺れる。良人さまも、びくびくと反射のように、腰を打ち付ける。
膝立ちの良人さまに、抱きつくようにしている、その大腿から、何かがつぅと伝っていく気がした。

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